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  • 2022.01.06

新型コロナウイルスにより影響を受けた事業者の
破産回避対策

新型コロナウイルスにより影響を受けた事業者の破産回避対策

企業の活動に深刻な影響を与えた新型コロナウイルス

新型コロナウイルス(以下「コロナ」といいます。)は、企業の活動に深刻な影響を与えています。コロナの影響により経営が窮状に陥り、破産を余儀なくされたという事案も少なくありません。

しかし、企業が事業継続を断念し、破産により消滅してしまうことは、従業員にとっては職を失うことを、仕入先にとっては得意先を失うことを意味し、少なからず地域経済に対するマイナスの影響が生じます。
そこで、今回はコロナによって影響を受けた企業が、破産を回避するために検討すべき策について解説します。

資金繰りをいかにして改善するのか

企業が破産をするのは、資金繰りに行き詰まり、債務の弁済ができない状態(このような状態を「支払不能」といます。破産法第2条第11項)に陥るからです。
したがって、破産を回避するためには、資金繰りをいかにして改善するのかがポイントとなります。

資金繰りを改善するための方法としては、次の2つの方向性があり得ます。

① 資金を増やす
② 支払いを減らす

資金調達による資金繰りの改善

まず、「資金を増やす」ための方法について、解説します。当面の運転資金を確保する方法としては、融資を受けることが考えられます。政府系金融機関における(実質)無利子の融資や民間金融機関における信用保証付き融資の保証料の減免など、さまざまな施策が行われています(これらの融資などの詳細については、経済産業省や中小企業庁のウェブサイトなどをご参照ください。)。もっとも、当然のことながら、融資である以上、少なくとも元本を返済する必要があります。融資を受ける際には返済のめどがどの程度たつかを慎重に検討する必要があるでしょう。

また、資金を増やすための方法として補助金の受給も考えられます。補助金であれば、融資とは異なり、返済する必要がないので、資金繰りの改善の高い効果が期待できます。
例えば、コロナによる売上減を補うものとして、月次支援金があります。これは、緊急事態措置・まん延防止等重点措置により影響を受け、売上が減少した事業者に支給されるものです。

また、コロナにより既存事業の売上への深刻な影響がある一方、自社の強みを活かして新たな事業に取り組むことで業績のV回復を狙うのであれば、その経費の一部が補助される事業再構築補助金の活用も考えられます。

事業再構築補助金のほかにも、新たな事業を行うための設備投資・販路開拓や業務の効率化を支援するものとして、ものづくり補助金、持続化補助金、IT導入補助金等を活用することも考えられるところです(これらの補助金の詳細については経済産業省や中小企業庁のウェブサイトなどでご確認ください)。このほか、自治体が独自に補助金を設けていることもあります。

ただし、これらの補助金は、要綱などで求められている要件を満たしていることが必要であるほか、場合によっては審査に合格する必要があり、受給には一定のハードルがある場合があります。また、これらの補助金は行政の予算次第で、いつまでも存在するものではありません。

ハードルが高い法的整理

次に「支払いを減らす」方法について、解説します。融資の返済などの債務を法的に大幅に削減する方法として、民事再生があります。

民事再生とは、将来の収益から債務の一部を返済するという再生計画を作成し、当該再生計画により取締役が経営権を維持したまま事業の再生を目指す裁判所による法的な手続を言います(民事再生法第1条)。民事再生では、すべての債権者が再生計画に同意する必要はなく、債権者の多数決(債権者の頭数および債権の額の過半数)で足りること、裁判所を通じた手続であるため、債権者間の公平が確保できることなどのメリットがあります。

もっとも、債権者が納得できる再生計画の策定は容易ではないこと、民事再生手続中であることは官報等を通じて広く周知されるため取引先が自社を「倒産企業」であると評価するおそれがあり、安定して収益を上げていくことが容易ではないこと、手続を行うのに多額の費用を要することなどから、そのハードルは高く、利用件数も決して多いとはいえない状況にあります。

密行性を確保しつつ迅速・柔軟な対応ができる私的整理

債務整理を行っていることを公開せずに行われるため「倒産企業」と取引先に評価されることを避けることができること、迅速で柔軟な対応ができること、手続に要する費用もそれほど多くはないことから、裁判所を介することなく債権者との協議により行われる私的整理が利用されることもあります。

私的整理で主に用いられるのは、返済計画の見直し(リスケ)です。返済計画を見直すことによって、毎月の借入れの返済額を減少させ、資金繰りの改善を目指すのです。
リスケは基本的には各債権者との協議により行われますが、多数の債権者がいる場合などは、協議が難航することもあり得ます。

そのような場合に用いられるものの一つとして、国が都道府県ごとに設置している再生支援協議会(産業競争力強化法第134条参照)による支援があります。

コロナ禍のなかで再生支援協議会が行っている取組みとして、「新型コロナ特例リスケジュール支援」をあげることができます。これは、再生支援協議会が中小企業者に代わり、主要債権者の支援姿勢を確認し、最長1年間の既存債務の元金返済猶予を要請するものです。再生支援協議会が債権者と債務者の間に入って調整することで、リスケが可能となるのです。再生支援協議会が通常行っている「再生計画作成支援」では、事業改善の見込みがあることが支援のための要件となっていますが、「新型コロナ特例リスケジュール支援」では事業改善の見込みが要件となっておらず、当面の資金繰りの改善のために利用しやすいものとなっています。

また、「新型コロナ特例リスケジュール」では、専門家による助言を受けながら、資金繰り計画を作成することも可能となっています。

新型コロナウイルスにより影響を受けた事業者の破産回避対策

認定支援機関による経営改善計画策定支援事業

融資・補助金の獲得やリスケ等を行うに際し、自社の経営をいかにして改善していくのかが問題になることがあります。このような場合、自社だけで経営改善計画を策定することが困難で、弁護士や中小企業診断士といった外部の専門家(認定支援機関)の支援が必要となることがあります。

経営改善計画策定や策定した計画の実施のモニタリングなどに要する専門家の費用の3分の2(上限200万円)を補助する制度が経営改善計画策定支援事業(通称405事業)と呼ばれるものです。特に小規模な企業においては、専門的な知見が乏しいことが少なくないことから、認定支援機関の持つ専門性の活用は非常に有用なものとなると考えられます。

ピンチの時こそ自社の事業を見直すチャンス!

本稿で紹介したもの以外にもコロナの影響を受けた企業を支援するための制度はまだまだあります。
コロナは、多くの企業の経営に深刻な影響を与えたことは間違いありません。しかし、経営が苦しい時こそ「自社のドメインは何か?」、「自社の強みは何か?」という自社の基本に立ち返るまたとない機会といえます。自社のドメインや強みが経営の窮状を乗り切るヒントとなりうるからです。

基本に立ち返りつつ、さまざまな制度を利用することによって、コロナ禍の苦境を乗り越えるための一助として、本稿が少しでもお役に立てば幸いです。

武田 宗久

武田 宗久

PROFILE

ライター,コンサルタント
1978年生まれ,大阪府出身。京都大学大学院法学研究科修了
2011年弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2020年中小企業診断士登録

債権回収や離婚等の一般民事事件を担当する一方,大阪の中小企業や自治体を元気にするため,法務・労務を中心とした支援に取り組む。著書に『改正民法対応!自治体職員のためのすぐに使える契約書式解説集』(令和2年,第一法規,共著)など。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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