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  • 2021.09.06

今から始めるDX

今から始めるDX

1.はじめに

最近、様々なところで、DX(デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation)という言葉がきかれるようになりました。

DXを”デジタルを活用する”と漠然とイメージしている人も多いと思います。しかし、漠然としたイメージで、「さて、当社もDXに取り組もう」と思っても、従業員のイメージがバラバラでまとまらなかったり、DXではなく「デジタライゼーション」になってしまったり、なかなか思うような成果が上げられないという事例が多くあります。

では、企業でDXを進めて成果をあげるためにはどうしたらいいのでしょうか。

2.DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXが最初に提唱されたのは2004年です。「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義されました。
日本においては、2018年に経済産業省が作成した「DX推進ガイドライン」で、以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

つまり、データやデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務、企業文化までも”変革”することがDXです。

DXの事例として有名なのは、米アマゾンです。
あらゆるものをインターネットで販売するという方針を掲げ、そして実現しました。それにより、様々な商品の販売のあり方を変えました。従来の小売店の売上が減少する等、アマゾンエフェクトをもたらし、結果として、従来のサービスや企業へも変革をもたらしました。

一方、DXと似た言葉に「デジタライゼーション」があります。日本語でいうと「デジタル化」です。アナログ処理をデジタル化することで、製品やサービスの付加価値を高めるための基礎データとして蓄積したり、業務効率化を図ることができます。例えば、紙の伝票管理をデータでの管理に変えることは、デジタライゼーションにあたります。

「デジタライゼーション」はDXの前提です。情報や情報の授受がアナログでは、DXの前提である”データとデジタル技術を活用”することができないからです。そのため、DXを実現するためには、先にデジタライゼーションを行う必要があります。

多くのスタートアップ企業がDXを先行して進めることができている理由の一つはここにあります。起業時点からデータ等がデジタル化されているので、すぐにDXを進めることができるので、ハードルが低いのです。

3.DXの必要性

では、なぜ、今DXが必要なのでしょうか。その理由は大きく分けて2つあります。

(1)消費者の変化

消費者の変化の一つが、消費者が「モノ消費」から「コト消費」に変化しているということでしょう。モノを購入するのではなく、体験をすることに対して、費用をかけるようになっています。また、自動車の「所有」が当たり前の時代から、カーシェアリングのような「共有」も当たり前になりました。

そしてコロナ禍によってより加速されたのは、ステイホームにより、あらゆるものがインターネットで実現するという環境です。消費者が商品やサービスを購入するときの優先順位が、まずはインターネット(遠隔)で実現できないか検討し、それがダメであればリアル(対面)で実現する、というマインドに変化しています。

これらの消費者のニーズに対応しなければ、売上拡大は見込めません。

(2)デジタル技術の進化による新しいビジネスモデルの誕生

デジタル技術が進歩し、しかもそれらの技術を容易に使える環境が整い、前述のように、スタートアップ企業を中心に新たなビジネスモデルが次々と生まれています。

前述のアマゾンもその一つではありますが、他にはAirbnb(エアービーアンドビー)も有名です。Airbnbは、宿泊業を営んでいない個人や企業がマンションの一室等を宿泊施設として貸し出すサービスです。ホテル等の既存の宿泊施設にとってこのサービスは大きな脅威であり、対抗して差別化を図り、競争力の維持・強化をはかることが必要となります。そのための一つの策がDXです。

単純に言えば、消費者やビジネスモデルの変化をとらえ、将来の成長、競争力強化のために、企業がどんどんDXを推進していけばいい、ということになります。しかし、多くの経営者がDXの必要性を理解しているものの、多くの企業で実現できていないというのが現状です。

2018年に、経済産業省のデジタルトランスフォーメーション研究会がまとめた「DXレポート」では、既存システムが複雑化・ブラックボックス化していることと、DXに対する現場サイドの抵抗が大きいことが、DXを進める上での大きな課題だと指摘しています。また、具体的な失敗例として、経営者から「AIを使って何かできないか」といった指示が出され、試行が繰り返されるものの、ビジネスの改革に繋がらないというような事例もあげられています。

だからと言って、放置していい問題ではありません。なぜなら、この「DXレポート」では、「2025年の崖」が提唱されており、これらの課題を克服できないと、DXの実現はおろか、2025年以降、日本全体で最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると試算しています。

2025年は遠い未来ではありません。それぞれの企業においても、DXをスピーディーに進めていくことが事業拡大のために必要不可欠になるといえます。

4.DX(デジタルトランスフォーメーション)を始めるには

課題を踏まえた上で、DXを成功させるためには、どのように進めていけばよいのでしょうか。

(1)現状分析と実施目的・方針の決定

先ほどの失敗事例のように、何のためにDXを実現するのかが不明確なままでは適切なDXを実行できないので、成功できません。

したがって、まずは既存業務やITシステム等の洗い出しを行い現状分析をした上で、課題を見つけることが重要です。その上で、それをどうやって解決するかを考えます。解決方法を考えるにあたっては、データとデジタル技術の活用ありきではなく、最終的な目的を明確にすることが必要です。その目的に沿って、データとデジタル技術を活用して、どのような新たな価値(新ビジネス創出、即時性、コスト削減等)を生み出すかを考えるとよいでしょう。

DXを成功できるかどうかは、この「実施目的・方針の決定」がカギを握っているといっても過言ではありません。

(2)経営戦略・ビジョンの提示とコミットメント

DXを推進していくと、これまでの仕事の仕方や企業文化の変革までをも求められるので、経営改革そのものに繋がります。

そのため、特に現場を中心に変わることに対して反発が大きくなります。だからこそ、経営戦略・ビジョンを明確に社内にしっかり提示することが重要になってきます。実際に、成功事例の企業では、「危機感の共有」「明確な課題の共有」「成果の共有」がしっかりとできていたと言います。

経営トップがこれらの変革に強い意志を持ち、従業員に対して継続的に説明をしながら、リーダーシップを発揮して意思決定をしていきます。従業員の意識を変えるためには、例えば、新しい挑戦を促すことや、それらの挑戦や取組みに対して評価する仕組みを導入することも有用でしょう。

(3)DX推進の体制の構築

DXの実行は一気にできるものではありません。経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門などの関係者が現状や課題に対する認識を共有し、必要な打ち手を講じていくことが不可欠です。スピーディーに進めるために、少人数のチームを組成し、トップダウンで変革に取り組むという方法もあります。

(4)DXの実施

方針に基づいて、DXを実施します。
ただし、一気に実現しようとしても、なかなかうまくいかないことがあります。
それは、DXの前にデジタライゼーションを進めなければならなかったり、新しいビジネスモデルを支えるための業務オペレーションを先に構築しておかなければならない等の、先に取り組まなければならないことがあるからです。

DXを進めるために、事前に必要な領域について説明します。

①ITシステム

社内にあるシステムが繋がっておらず、たとえば人手でデータ連携している等の場合は、データ連携機能を構築したり、データを集約して、デジタル技術が活用できるように変えます。

②業務オペレーション

例えば、紙の帳票で業務を遂行している等の場合は、情報をデータ化する等、業務のデジタライゼーションを実施します。それにより、そのデータがDXの基礎となるだけでなく、業務オペレーションの効率化、ミスの削減、コスト削減等に繋がります。

③顧客接点

顧客との接点が店舗等の対面であっても、それをDXで生かすためには、データ化する必要があります。そのためによくある方法が会員カードを作るなどして、その顧客の継続的な購入履歴をデータ化しておく必要があります。

④人材や文化

従来より電話と紙で業務を行っている等の理由によって、業務をPCで行ったり、データ化することに対して抵抗のある従業員もいます。従業員への教育やデジタルを活用することを当たり前とする文化に変えていくことは、DXを進める上で重要になってきます。

今から始めるDX

5.DX(デジタルトランスフォーメーション)の事例

DXを実現するために、利用しないといけない技術が決まっているわけではありませんが、一般的に利用される技術には、AI、IoT、ドローン、VR、ビッグデータ、クラウド、5G等があります。

今回は、「中小規模製造業の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査報告書」の「株式会社IBUKI」の事例を見てみましょう。この企業では、AIとIoTを活用しています。

(1)概要

株式会社IBUKIは、射出成形用金型の設計・製造を行っている、従業員が63名の企業です。しかし、取引先や経済環境の変化により業績不振に陥り、苦戦が続いていましたが、2014年に製造業コンサルティング業を行う企業の支援のもと、同社の大きな強みである金型製造に有する優れたノウハウを最大限に活用した経営改革に取り組みました。

またコンサルティング業を行う企業のAI技術を活用し、これまで人に頼っていた品質の確保・向上の自動化を図るなど、新たな技術の導入にも積極的に取り組みました。

(2)経営層と従業員のビジョンの共有

従業員の仕事に対する動機づけが改革の大きな柱であり、デジタル化はあくまでその改革を進めるための一部であるという認識を社員と共有し、「家族(社員)以外は全部変える」という社員の意識改革とともに、急ピッチであらゆる見直しを行いました。

(3)デジタライゼーションの実施

それまでベテラン職人の頭の中にあったさまざまな知識や情報を一つずつ聞き出し、それらをデジタルデータとして扱えるようにして(データ化)、それを活用しやすいように分類しながら、データを蓄積していきました。
また、紙の伝票を電子化し、工場内のマシンの稼動データを蓄積しています。

(4)蓄積データを利用したDXの実施

①AI検索エンジンを利用した情報検索・見積もり作成システムの導入
ベテラン職員の判断に多くを委ねられていた情報検索・見積作成を刷新し、AI検索エンジンを利用した情報検索・見積もり作成システムを導入しました。それにより、過去の見積書など共有されていなかった情報や判断知識をデジタルデータとして蓄積し、AIで検索を最適化した結果、新しい注文に対し過去の実績から最適な情報を簡単に引き出せるようになり、大幅な効率改善につながっています。

②IoTの導入と熟達者の判断のAI化
射出成形において、センサを使い金型の中を「見える化」するIoT金型を導入しました。これによりIoT金型の成型で内部の状況を把握できるようにし、勘に頼る部分があった最終調整の修正回数削減を実現することを試行しています。

③データの一元管理による効率化
今後、別々に処理している工場内のマシンの稼動データを一括して運用することで、データ運用の効率化を図ります。その結果、マシンの稼働状況が営業社員からもわかるようになるため、迅速な営業活動に繋げていくことができるようになる想定です。

6.まとめ

DXという言葉を聞くと難しそうな気がしますが、結局のところDXが目指すものは、顧客のニーズに応え、新しいビジネスモデルを生み出していくことで、自社の優位性を保ち、持続的に成長していくことです。それは、デジタルが浸透する前より、企業が常に直面している課題ともいえます。

DXを進めるにあたり、何から手をつけてよいかわからない場合は、まずはDXの前段階であるデジタライゼーションから取り組んでいきましょう。そうすることで、DXすべき領域が明らかになることも多いです。

2025年の崖」はすぐそこです。ぜひ、まずは最初の一歩を踏み出してみましょう。

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