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  • 2021.01.22

管理職が確認したい労災のキホン

管理職が確認したい労災のキホン

労働災害(以下、労災)と聞いて何が思い浮かぶでしょうか。製造業や建設業の方であれば、ご自身の会社で発生する具体的な災害を思い浮かべるかもしれません。そうでない方は、「自ら命を絶った○○さんが労災認定」というニュースの報道を思い出したかもしれません。

工場や建設現場など、普段から安全に気を配るべき職場で働いている方以外は、あまりなじみのない言葉でしょうし、実際どのような時に労災として扱われるのか、具体的な手続き方法などは知らない方がほとんどでしょう。しかし「営業周りの最中に部下が事故にあってしまった」、「通勤中に転んで怪我をしてしまった」場合などに、自分で判断して労災申請を怠れば、労働監督署から労災隠しを疑われ、会社が処分を受けてしまう危険性があります。

そのような事態を避けるためにも、今回は会社の経営者や管理職の方に向けて、労災とは何か、どのような場合に労災と判断されるのか、具体的な手続き方法など労災のキホンをご紹介したいと思います。

労災とは

労災の定義は、労働安全衛生法第2条に以下の通り記されています。「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。」そして労働災害が発生してしまった場合、その救済を得るための制度には、労基法上の労災補償制度、労災保険法による労災保険制度、労災民訴とよばれる民事訴訟における損害賠償請求、の3つがあります。[ⅰ]ここではの労災保険法による労災保険制度について扱います。

労災保険では、主に以下の2つの場合において補償がおこなわれます。仕事上の原因による労災である業務災害と、通勤中の原因による労災である通勤災害です。またその対象者ですが、通説・判例では労働基準法第9条のいう労働者(「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業者又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう)に準じる[ⅱ]とされています。つまり、アルバイトやパートの方も対象となります。なお、派遣の方は派遣元の労災保険適用ですので注意しましょう。

管理職が確認したい労災のキホン

では、どんな場合に労災と判定されるのでしょうか。業務災害と通勤災害に分けてみていきましょう。

業務災害

労災保険の適用有無は、その災害が「業務上」のものかにより決まります。例えば、「住宅建設の際、木材に釘を打っていたが誤って金槌を指に当ててしまい腫れてしまった」という場合、業務上の災害にあたります。しかし、休憩時間中にスポーツをしていて怪我をした場合には、当然業務上の災害にはあたりません。

では、社内行事の運動会中の怪我のような場合はどうでしょうか。このような場合、それが「業務行為またはそれに伴う行為といえるか」という観点で判断がなされます。例えば、運動会への出場が義務化されていて、欠場した場合には欠勤扱いされるようなものであれば、業務上の災害と判断されるでしょう。

次に、会社の繁忙期が過ぎた頃、ある日部下がうつ病になってしまった場合はどうでしょうか。厚生労働省の示す精神障害の労災認定要件は認定基準の対象となる精神障害を発病していること、認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること、業務以外の心理的負荷や個体的要因により発病したとは認められないこと、の3つ[ⅲ]です。しかしこのような場合、一個人で判断できることではないため、労働基準監督署に相談しましょう。

通勤災害

通勤災害は、もしかしたら自分は関係ないと思っている方が多いかもしれません。しかし、自家用車や自転車で通勤していれば、当然自分が事故の加害者となる可能性だけではなく、事故の被害者になる可能性もあります。また、地域によっては冬に路面が凍結し、自動車通勤時のスリップや徒歩通勤時の転倒なども考えられます。

では、どんな時でも通勤時の怪我ならば労災になるかというと、それは違います。労働者災害補償法第7条2項によると、通勤とは「労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うこと」と定義されています。次に掲げる移動として住居と就業場所との往復、就業の場所から他の就業の場所への移動、③①の往復に先行しまたは後続する住居間の移動、が挙げられています。つまり、通勤途中に就業・通勤とは無関係の目的のために通勤経路から外れた場合や、帰宅途中に長時間飲食をした場合などは、通勤災害にはあたらないとされています。ただし、日用品の購入等の場合は、買い物の終了後合理的経路に復帰した後は通勤として扱われるので注意が必要です。

労災の具体的な手続き

では、実際に自分や会社の同僚が労災にあってしまった場合にはどのように対処すればよいでしょうか。具体的な手続き方法を紹介します。ここでは仕事中に部下が怪我をしてしまった場合を想定します。

まず、部下を病院に連れていき、診療してもらいます。そこで重要なのが「労災の適用となる可能性が高いこと」を病院に伝えることです。労災の場合には、治療代が保険料で支払われるのですが、たとえ医療費が高額になっても大丈夫なように、立替をしなくて良い(労災病院や労災保険指定医療機関の場合。指定医療機関でない場合はいったん治療費を負担します)ようになっています。つまり、その場で治療代は支払いません。間違っても病院に何も言わず、健康保険証を見せて支払いをすることのないようにしましょう。

また、担当のお医者さんに言って診断書を書いてもらうようにしましょう。後で労働基準監督署に説明する際にあると役に立ちます。重い怪我をしているにもかかわらず、休業0日で翌営業日から働いた場合(たとえ本人の希望でそうしていても)労働基準監督署に「会社が無理に働かせているのではないか」と疑われる可能性もあるます。なので、診断書があると働いても大丈夫、という証拠になりえます。なお、通院が必要な場合は一定の条件の場合に交通費が支給されます。

次に、労災保険の申請書を準備します。厚生労働省ホームページより、様式をダウンロード、印刷し、記載例を参照して記入してください。業務災害の場合は様式第5号、通勤災害の場合は様式第16号の3と様式が異なるので注意が必要です。

そして、申請書を受診した病院へ提出します。申請書は病院経由で労働基準監督署へ送られることとなります。なお、通院の都合で最初に受診した病院から別の病院へと切り替えた場合には、指定病院等(変更)届(様式第16号の4)の提出も必要ですので注意してください。その他細かい手続きについては厚生労働書ホームページに記載がありますので、参照してください。

最後に、労災は想像以上に周りで起こる、起きているものです。今まで経験がなかったならば、それはラッキーであったか、または見過ごしていたからかもしれません。労災を申請せず放置しておくことは、労働基準監督署からの処分や従業員からの訴訟など、思わぬリスクに結びつきかねません。思いっきり働くためにも、職場環境には気を配り、不運にも事故があった際には、会社のためにも従業員のためにも、すぐに上記の方法で対応していただければと思います。

参考文献

[ⅰ] 荒木尚志, 『労働法』, 有斐閣, 2009, p199

[ⅱ] 荒木尚志, 『労働法』, 有斐閣, 2009, p203

[ⅲ] 厚生労働省, 『精神障害の労災認定』, https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120215-01.pdf

熊澤 祐喜

熊澤 祐喜

PROFILE

ライター、コンサルタント

神奈川県出身。東京大学法学部を卒業後、最大手ゼネコンに入社。入社後は、工事現場の事務として、事務所立ち上げから閉鎖まで、総務・経理など様々な業務を経験。本社異動後、債権管理や資金繰りを担当。将来父親の会社を継ぐため転職し、現在は石油販売会社にて経営企画業務に従事している。

2020年中小企業診断士登録。
現場業務から本社における管理業務までの幅広い経験をもとに、企業支援や執筆などを行っている。


お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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