伝わる!営業資料のつくり方
どんな業界であっても、「営業をしたことがない」という企業はほとんど存在しないのではないでしょうか。そして、営業時に不可欠なのが「営業資料」です。商品・サービスのセールスポイントを盛り込み、新規顧客の獲得や既存顧客のリピートを促す。営業資料は、その出来不出来によって売り上げを左右するものといえるでしょう。
その営業資料も、つくり方によって相手への伝わり方は大きく異なります。今回の記事では、今日から使える営業資料作成の基本をお伝えします。
営業資料の基本構成
まずは営業資料の基本的な構成についてです。多くの企業では、PowerPoint等のプレゼンテーションソフトウェアを用いて営業資料を作成するでしょう。その際、自社の商品・サービスの情報をただ並べるのではなく、相手にメッセージを伝えるための工夫が必要です。
・全体のストーリーがわかりやすい資料構成に
営業資料の目的は「相手を動かし、自社の商品・サービスを購入してもらうこと」です。そのためには、メッセージが的確に伝わり、顧客にメリットを感じさせる構成にしなければなりません。
基本的な構成は「目次→エグゼクティブサマリー→本編(課題→解決策・効果→信頼)→まとめ→Appendix」とするとよいでしょう。この構成に沿って説明を行うことで、全体のストーリーがつながり、メッセージが伝わりやすくなります。
・目次
まず目次で資料の全体構成を提示します。最初に全体構成を入れて、これから行う説明のストーリー展開をつかんでもらうことで、メッセージが入ってきやすい環境を整えます。
・エグゼクティブサマリー
次のエグゼクティブサマリーは、最も伝えたいメッセージを端的に説明するパートです。スライド1枚に顧客の主要課題と、それに対する自社の最も強力な提案(解決策)と効果を簡潔にまとめましょう。このスライドが1枚あるだけで、相手の注意を引きつけられるかどうかに違いが生じます。
エグゼクティブサマリーは、時間を十分に取ってもらえない商談時にも活用できます。忙しい相手にはこのサマリーだけでも見てもらうことで、自社の商品・サービスに関心を持ってもらうよう促しましょう。
・本編(課題→解決策・効果→信頼)
本編では、①顧客が抱える課題(問題提起)→②自社が提案する解決策とその効果→③自社が信頼できる企業であることの証明、という順序で顧客を説得していきます。
特に重要なのが①顧客が抱える課題(問題提起)です。事前のヒアリングや調査などから推測した課題を提示して、顧客の傾聴姿勢を誘います。具体的な失敗ストーリーや分析数値とともに提示できると、より説得力が増すでしょう。ここで「本当に私たちのことをわかってくれているな」と思わせることができるかどうかが重要です。
そのうえで、自社の商品・サービスによる解決策と効果を提示します。単なるセールスポイントの羅列ではなく、他社と比較したときの相対的な強みを強調して、課題を解決できるイメージを持ってもらいましょう。
さらに、新規顧客の場合には、取引先として安心できる企業であることも理解してもらう必要があります。企業の歴史や実績、取引先などを提示して、信頼できる企業であることをアピールできれば十分です。
・まとめ
これまでのパートでメッセージを伝え終えてはいますが、相手が必ずしも提案内容すべてを覚えてくれているとは限りません。
そこで、最後にまとめのスライドを利用して資料のポイントを振り返り、「結局何を伝えたかったのか」を整理することで、自社からのメッセージを印象に残すことを狙います。
・Appendix
商品・サービスの詳細など、補足の情報は本パートにまとめます。というのも、途中で様々な情報を入れてしまうと、全体のストーリーがつかみづらくなり、メッセージが伝わりにくくなってしまう恐れがあるからです。
いざ営業資料をつくるとなると情報を多く盛り込みたくなりますが、ストーリーのわかりやすさ、メッセージの伝わりやすさを優先して、本編に盛り込む説明は必要最低限におさえましょう。
スライドデザインの基本(ex.フォント、色使い、伝えたい箇所の強調方法)
このように、基本的な構成をおさえてストーリーがわかりやすい営業資料をつくることで、よりメッセージが伝わりやすくなり、顧客を動かしやすくなります。
一方で、営業資料のデザインが基本的なポイントをおさえていないと、伝わるものも伝わらないという事態になりかねません。営業資料づくりの際、どうデザインすれば相手に伝わりやすいのか。最低限おさえるべきポイントについてご紹介します。
・スライドタイトルはわかりやすく!
全体構成の基本をおさえていても、各スライドのメッセージが伝わらなければ効果が薄まってしまいます。そのためにも、まずはスライドタイトルが、そのスライド内容を端的に表しているかどうか確認しましょう。スライドタイトルがわかりやすければ、それだけで説明も頭に入ってきやすくなります。
・スライドには必ずメッセージを入れる!
非常にもったいないのが、商品・サービスの特長は書いてあるもののそこで終わってしまい「結局何が伝えたかったの?」と思われてしまうケースです。
例えば解決策のスライドであれば、提供する機能だけではなく、それによって得られる顧客のメリットをあわせて提示することで、本当に伝えたいメッセージを明確にすることができます。
この「相手のメリットを提示する」という考え方は特に大切です。説得する相手が誰なのかに留意しながら、顧客にとってのメリットを提示できているかどうかを十分に吟味する必要があるでしょう。
・色は使いすぎない!フォントは迷ったら「メイリオ」で!
時折カラフルな営業資料を見かけますが、プロのデザイナーでない限り、多くの色を使いこなすのは困難です。「黒(濃いグレー)+基本色①+基本色②」程度に留めることで、色の使い分けルールがわかりやすくなり、見やすくもなります。
また、フォントは迷ったら「メイリオ」(Windows)や「ヒラギノ角ゴ」(Mac)、「游ゴシック」を採用するのが無難です。可読性や美しさの観点から評価が高いフォントですので、これらに変えるだけでも随分と印象が変わります。
・グラフは伝えたい箇所を強調する!
数字の増減にフォーカスするときに便利なのがグラフです。メッセージを伝え、相手を動かすことが目的なので、伝えたい箇所を強調するためにも不要な情報は極力カットするとよいでしょう。具体的には、グラフの目盛りや単位は削除する、強調したい部分以外はグラフの色をグレーにして目立たせないようにする、強調する箇所は文字サイズを大きくするなど、メリハリをつけることで伝わりやすいデザインになります。
なお、営業資料では量の増減を示すことが多いですが、その場合は棒グラフを使うのがおすすめです。円グラフはシェアを示すときに、折れ線は率や複数の要素の変化を示すときに使うなど、見せたいものにあったグラフを使いましょう。
日々ブラッシュアップして営業資料の質を高める
営業資料づくりで一番重要なのは、つくりっぱなしにせずに日々の営業活動を通して随時ブラッシュアップしていくことです。
商談時にストーリーの流れがわかりにくかったところ、メッセージが伝わりにくかったところ、情報が不足していたところ、逆に情報が過多だったところなどを中心に、PDCAサイクルをまわして営業資料をリニューアルしていくことで、予想以上にそのクオリティを向上させられる可能性があります。
今回ご紹介した内容は基本的なものですが、意外に忘れがちな部分でもあります。営業活動自体が忙しいと、資料自体の改善は後回しにされてしまうケースも多いです。ぜひ一度、十分に時間をとって営業資料の見直しに取り組んでみてはいかがでしょうか。
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