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  • 2020.06.19

小規模から始める越境EC(輸出)ファーストステージの実務(第3回)

知っておきたい関税の話と実務における
トラブルの傾向

知っておきたい関税の話と実務におけるトラブルの傾向

今回は1)新型コロナウィルス感染症による国際郵便への大きな影響、2)発送する際に理解しておいた方がよい関税の話、3)通関手続き、4)発送実績に基づいたトラブルの傾向をご紹介致します。

1)新型コロナウィルス感染症による国際郵便への大きな影響

新型コロナウィルス感染症の世界的流行に伴い、3月後半から多くの航空機が大幅に減便・運休となる事態となりました。510日時点でコロナウィルス感染症の影響は世界的に回復の兆しが見えてきておりますが、国際郵便に関してはほとんど進展が無い状況です。

日本郵便は、42日多くの国に向けて国際郵便物の引受・一部サービスの一時停止を発表しました。続いて423日はついにアメリカ合衆国向けEMS・航空便が停止するという非常事態となりました。510日時点で全ての郵便物が停止しているのは50ヶ国、EMS・航空便が停止しているのは146ヶ国にもなります。現在EMSや航空便で発送可能な主要国は、ヨーロッパでは英国・フランス・ドイツ・オランダなど、北米でカナダ・メキシコなど、アジアでは、韓国・台湾・シンガポール・タイ・ベトナムなどわずかな国だけになっています。これらの国々への発送も従来の到着予定期間に比べると、大きな遅れが発生しています。また一部の国では、船便の受付は可能となっているようです。

・日本郵便 > 国際郵便 > お知らせ

国際郵便が大きな影響を受けている反面、DHLFedExUPSなどの海外国際宅配便会社や日本郵便の国際宅配便サービスであるUGX(ゆうグローバルエクスプレス)は、遅れはありますが、発送停止というほどの大きな影響は見られません。各社は自前の専用機などの輸送手段を所有しているためであり、一般旅客機のスペースを利用している国際郵便とは大きな差が出ています。発送コストが高くてもビジネスに支障が出ている方は、この機会に国際宅配便会社の利用も検討してみて下さい。

2)発送する際に理解しておいた方がよい関税の話

あらためて「関税」の定義を調べてみると、「国境通過時に輸入国政府によって、輸入品に関して課せられる税金(輸入税)」と言えます。関税の目的は大きく分けて、国内産業の保護を目的とする保護関税と国家収入を目的とする財政関税がありますが、先進国において多くの場合は、前者の保護関税の意味合いが大きくなっています。そのため最近では、アメリカ合衆国のTPP協定離脱や、米中貿易戦争で双方の国で追加関税が何千品目について発動されたように、関税は政治の道具に使われることも多いです。

それゆえに各品目の税率を国ごとに理解することは、専門家でもなければ不可能に近いです。また関税の納税義務は輸入者にあり(皆さんが日本から輸出した場合は、海外の購入者)こちらに支払責任や説明責任はないのですが、B to Cや相手方が貿易実務に慣れていない場合だと、こちらに責があるかの様に主張され、トラブルになりがちです。

トラブルを防ぐためには2つの方法があります。
ひとつめは、事前に購入者とよくコミュニケーションしておくことです。契約書を交わす場合は問題は少ないと思われますが、ネット上やメール等で売買が終了してしまう場合には、説明文に下記のような文章を追記しておくことも重要となります。

Import duties, taxes and charges are not included in the item price or shipping charges.
 These charges are the buyer's responsibility.

 輸入税等は購入者の義務

Please check with your country's customs office to determine what these additional costs
 will be prior to bidding/buying.
 関税については、自国の通関に問い合わせを

These charges are normally collected by the delivering freight (shipping) company or
 when you pick the item up - do not confuse them for additional shipping charges.
 これらの費用は通常、荷物の受取時に支払う

ふたつめに、事前におおよその関税率を調べておくことです。特定の国・商品が絞られている場合は、下記のJETROホームページからワールドタリフ(FedEx)のリンクにて調べることができます(登録が必要です)。

JETRO > 目的別に見る > 輸出 > 世界各国の関税率 > 初めての方へ

ここでも前回紹介しましたHSコード(貨物を輸出入する際に用いる6桁の統計品目番号のこと)が必要となります。HSコードは税関のホームページ 輸出統計品目から検索することができます。
相手国での通関がスムーズに済むように、発送の際に同送する税関告知書やインボイスに、内容品の詳細・品名・型番などを英語やフランス語、またはその国で通用する言語で、詳しく記載することも重要です。

3)通関手続き

知っておきたい関税の話と実務におけるトラブルの傾向

次に国際郵便で発送する場合の通関手続きについてご紹介します。内容品の合計金額が20万円以下の場合は税関告知書を記入する以外に特に手続きは不要です。税関告知書はCN22CN23と呼ばれ、国際郵便マイページで送り状を作成した場合、自動的に作成されます。郵便局等で発送した後は、日本郵便と税関の間で掲示・検査を行い、そのまま海外への発送処理へと移行します。

合計金額が20万円を超える場合は、税関へ輸出申告書を提出し、輸出許可を得る必要があります。この場合の申告は、自分で行うか、日本郵便や代理の通関業者へ手数料を払い委託することも可能です。また以下のような品物を輸出するには、法令等により輸出の許可や承認が必要な場合があります。税関に問い合わせの上検査を受ける事前検査も可能となっていますので、該当する場合は確認しておく方が良いでしょう。

①古美術品、種子や球根などの植物、ハイスペックパソコン、銃砲や刀剣類など法令により輸出の許可や承認が必要な品物を送る場合
②輸出に伴い関税や消費税などの減免税など受ける場合
違約品として返送する場合や修繕のために再輸入する場合

・税関 > 輸出入手続 > FAQ > 外国へ郵便物を送る場合の手続

4)発送実績に基づいたトラブルの傾向

輸出実務においてトラブル発生のNo.1は遅延です。たとえ注文当日に運送業者に引き渡しが済んだとしても、バイヤーが無事に受け取るまでは長い期間がかかり、そのどこかで遅延が生じても、全ては発送側のこちらの責任になってしまいます。遅延原因は天候であったり、事故であったり、現在の新型コロナウィルス感染など様々な不測の事態です。予定されていた配送期間を過ぎても荷物が到着しない場合、バイヤーからの問い合わせが入ります。対応の第一歩は追跡番号を使って状況を確認することです。

国際郵便の場合、問題が起きたら「調査請求書」を使って調査を依頼することができます。出荷日から6か月以内(南アフリカ向けは1年以内)の書留・保険付国際小包であれば、現地での配達状況について調査を求めることができます。出荷した郵便局に提出し、書面で回答を得られます。ただし、回答が得られるまで通常3~4週間かかることが難点です。

・日本郵便 > 国際郵便 > ダウンロード > 調査請求書

経験上遅延が発生するのは、SAL便などの安価な発送方法で発送期間が長いものがほとんどであり、航空便のeパケットでの発生は非常に低く、もっとも早いEMSでは過去8年間でも数件と非常に少ないです。
遅延が発生する確率を、もっとも発送数量が多いアメリカ宛でみると、SAL便で3-5%eパケットで1%程度です。遅延の理由としては、半数程度は「紛失」であり、残り半数程度は「空港や物流拠点での滞留」です。滞留であれば、調査請求書の返事が来る頃には荷物が動き出して無事に届くことがほとんどです。紛失の場合は、損害賠償金として商品代金+送料が2週間程度で口座に振り込まれます。

アメリカの遅延発生確率は、全世界の平均でみるとやや高い傾向(遅れることが多い)です。アメリカよりも遅れる確率が高い国は、ブラジルとメキシコが双璧で、続いてフィリピンなどです。しかしながらこれらの国々のお客さんは自国の状況をよく理解しているのか、予定よりも1ヶ月も遅延して届いても「思ったより早く着いたよ!」などと笑い飛ばしてくれる傾向もあり(だから郵便事情が改善しない?!)あまりクレームになりにくい一面もあります。

次に発生するトラブルは追加費用の問題です。2)でお話しした通り、関税などの追加費用は購入者側に支払義務があり、事前に告知もしているのですが、時折発生します。今回は私が主に取り扱っている玩具のケースについてご案内します。もちろん商品が変われば関税も変わるので、皆さんの取り扱う商品により傾向が変わると思われます。

このケースが非常に多いのは、イギリス・ドイツ・オランダ・ベルギーなどのヨーロッパ諸国です。特にイギリスで、通関取扱費として商品価値30-40ユーロの荷物に対し、20ユーロ程度徴収されるケースがしばしば見られます。しかもこの問題の非常に難しい点が、「同じ商品・価格のものを、同じ相手に発送」しても、追加費用を取られるケースと取られないケースがあることです。同様の問題は、ブラジルなどの南米諸国でも発生しますが、ヨーロッパほど高額ではありません。また面白いことに同じEU圏内でもスペイン・イタリアのラテン系の国では、ほとんど問題になったケースはありません。

最後に

今は国際物流が止まり、サプライチェーンが上手く回らないために、国内製造への回帰といった傾向が見られるようです。しかし、この事態が収まれば、また以前のように、いや以前よりもますます国際物流の重要性は高まると思われます。ぜひ国内事業者の方にも、海外市場に目を向けて、その一歩を踏み出して頂きたいと思います。

次回からはマネー編といたしまして、価格決定や決済、経理上の工夫などについてお話させて頂く予定です。

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