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  • 2019.10.02

デジタル時代に求められる、中小製造業の『現場力』」とは

デジタル時代に求められる、中小製造業の『現場力』」とは

意外と知らない「現場力」の定義

製造業に携わる方々の中には「現場」の力、すなわち「現場力」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2012年以降、政府が発行しているものづくり白書(製造基盤白書)においても、「現場力」は継続的に取り上げられているキーワードです。

経営部門や総務・経理財務部門といったバックオフィス部門で要求されるスキルとは異なる、製造やオペレーションの現場ならではのスキルとして「現場力」という言葉が用いられることが、しばしば見かけられます。
経営学の観点からも、オペレーションにおける日本企業の強みとして取り上げられ、「現場力」をとりあげた書籍も複数出版されています。

しかし実は、「現場力」という言葉の定義には、決まったものがないのです。
今回の記事では「現場力」とはどんな力を指しているのか、また今後のデジタル時代に求められる、製造業で働く人材のスキルとしての「現場力」とはどのようなものであるのかについて、解説していきます。

現場力とは「問題発見力」や「課題解決能力」である

まずは、政府が発行している「ものづくり白書」における現場力の定義について見てみましょう。
「ものづくり白書」は、別名を製造基盤白書ともいい、毎年、政府がものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策や、昨年の施策の取組結果、企業へのアンケート調査の結果などをまとめているものです

ものづくり白書によれば、現場力とは「暗黙知や職人技」をも駆使しながら、問題を「発見」し、企業や部門の壁を超えて連携・協力しながら、「課題解決のための道筋を見いだせる力」とされています。
すなわち、現場力とは「問題発見力」や「課題解決能力」を合わせた能力であると考えることができるでしょう。

ただし、人が介在して企業活動が行われる場面のすべてが「現場」になりえますので、「現場力」が発揮される場面は生産現場には限りません。
例えば、製造した品を出荷する物流部門や、お客様からのご意見を承るサービスセンター、カスタマーサポートセンターといった部署も「現場」のひとつと考えることができます。

従来、日本の製造業においては「すり合わせ」や「カイゼン」、「匠の技」といった言葉で「強い現場」「現場力の高さ」が表現されてきました。
「強い現場」の存在は、日本の産業、特にものづくり産業の基盤であり、日本の製造業が国際的な競争力を維持するための原動力の一つである、と言われてきました。

それでは、ものづくり企業における現場力とは、具体的にはどんなスキルのことを指しているのでしょうか。

製造業で求められる具体的な「現場力」とは何か

経済産業省が企業に対し、「現場力として重視するもの」に関するアンケート結果を行った結果が、グラフにまとめられています。(図135-3

デジタル時代に求められる、中小製造業の『現場力』」とは
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デジタル時代に求められる、中小製造業の『現場力』」とは
デジタル時代に求められる、中小製造業の『現場力』」とは

出典:2017年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)p138
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2017/honbun_pdf/pdf/honbun01_01_03.pdf

201612月の調査結果によると、「問題や課題を発見することができる」ことを重視する、と答えた企業がおよそ7割、「部門(部署)を超えた連携・協力ができる」「課題解決のための道筋を見出せる」ことを重視する、と答えた企業がおよそ6割と、高い割合を占めています。

また「現場力として重視するもの」の回答結果は大企業と中小企業において、ほぼ同一の傾向を示しており、企業の規模によって重視される点は変わらない、ということがわかります。

一方で、「現場力として課題になっているもの」についてのグラフ(図135-4)に目を向けてみますと、大企業と中小企業の間に違いがあることがわかります。
特に企業規模による違いが大きくなっているのが「指示がなくても自ら目標を課し行動ができる」という点です。この力については、重視するものとして約6割の企業から回答されている一方で、「課題となっているもの」としても同じく約6割の企業から挙げられています。
つまり「自ら行動する力」は現場力の一つとして重要でありながらも、企業にとっては、働く人材に身につけてもらい、その能力を発揮してもらうことが難しい課題となっているといえます。

ここまで、企業に対するアンケート調査の結果を見てみますと、
1) 問題や課題を発見すること
2) 課題に対して解決のための道筋を見いだすことができること
3) 課題解決のために、部門や部署の壁を越え、周囲と連携しながら取り組みを行うことができること
この3つの能力が、「現場力」として重視されていることがわかります。

「現場力」を維持するために

現在、企業において課題となっているのは、これまで日本の製造業の強みであった「現場力」をいかに維持していくか、また時代の変化に合わせて強化をしていくのかという点です。

2017年の経済産業省の調査によれば、「『現場力』の維持・強化を図る上での課題」は何か、と言うアンケートに対して、半数以上の企業が「人手不足により人材の確保が難しくなってきている」と回答しています。(図114-12

少子高齢化による人材不足は日本の企業全体における課題となっていますが、 製造業の現場力の維持に際しては、現場で培われた熟練技術者の能力やノウハウの承継を行うための、後継人材の確保が必要なのです。

デジタル時代に求められる、中小製造業の『現場力』」とは

出典:2017年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)p26
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2017/honbun_pdf/pdf/honbun01_01_01.pdf

時代のニーズに応じて変わる「現場力」

今日、日本の製造業が誇ってきた「現場力」を新しく捉え直し、時代に即して変化させることが求められています。少子高齢化社会の到来により、中小企業の人手不足が顕著になっていることや、デジタルツールの活用の重要性が増してきていることがその背景にあります。

これまでは主に生産工程、例えば製造や品質管理といった工程で「現場力」は発揮されると考えられてきました。しかし、経済のグローバル化やサービス化が進行するなかで、生産工程に限らず、設計開発やアフターサービスといった業務の重要性が増してきています。
さらに、生産工程の中でも、各工程の部分最適ではなく、バリューチェーンにおけるすべてのプロセスを通じての「全体最適」を実現することが求められるようになってきました。

特に中小規模の企業においては、ロボットや IT技術、 IoT(Internet of things, モノのインターネット)、その他先端技術の導入や利活用について、「まだ対応しきれていない」「これから対応すべき課題である」と感じている企業が多いというのが現状です。
各企業で培われた技能を承継すると共に、新たな技術や知識を取り入れ、市場ニーズを満たす製品を考え出し、作り出し、送り出すことができる能力をもつ人材が今、必要とされているのです。

しかし、そんなスキルを持った人材を確保することは、簡単なことではありません。このようなスキルを有した人材は世界的にも希少であり、獲得競争は激しくなってきています。
製造業は、多かれ少なかれ人材の確保に苦労しています。しかし、そのような苦境においても、現場の技能を承継するために、技術やノウハウを若手世代に承継するための方針や計画を策定し、指導体制を整備している企業では、人材の育成・定着に成功しています。
現場力の維持や向上のためには、技能承継を現場任せにするのではなく、企業の経営層や企業全体が取り組みを推進していく必要があるのです

またこれまで 暗黙知として「口伝」や「見て盗む」といった形で伝えられてきた匠の技についても、見える化・明文化を図り、若手技術者の育成を行いやすいよう、社内の仕組みを整備することも必要です。
このような「現場力」の維持に関する取り組みは、「ものづくり白書」などでも多く事例が紹介されています。自社の「現場力」の維持・向上の仕組みづくりのために、他社の成功事例をご覧になってはいかがでしょうか。

狩野 詔子

狩野 詔子

株式会社プロデューサー・ハウス

PROFILE

ライター、コンサルタント
大阪府中小企業診断協会 観光・サービス経営研究会 代表

サービス業・観光業における生産性向上を専門とするコンサルタント。
ヤマハ株式会社、デロイトトーマツコンサルティング合同会社にて、製造業の国内外拠点における業務改善プロジェクトに多数参画。
現在はテーマパーク運営企業にて飲食部門・バックオフィス等の業務効率化を手掛ける。

共著「一人ひとりの『働き方改革』講座」(日本マンパワー株式会社)
執筆記事「サービス業で使える!生産性を上げる『カイゼン』テクニック5選」、「サービス業のマーケティング入門!自社の『7P』を把握しよう」(中小企業庁ポータルサイト「ミラサポ」)ほか多数。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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