町工場の挑戦が熱い!新たな価値を生みだしているスゴイ中小企業
これまで大企業の下請けというイメージが強かった町工場に、新たな潮流が生まれています。長年の経験を活かしたオリジナル商品の開発を手掛け、新たな価値を生みだす動きがあるのです。今回は、これまでになかった斬新な製品を作り出したことで企業としての輝きを放つようになった、注目の企業を3社紹介します。
ゴミを素材に。リサイクル業界に風を起こした「ナカダイ」
東京都品川区に本社を構える株式会社ナカダイは、産業廃棄物を細かく解体・分別してリユース、リサイクルを行う事業者です。前橋に工場を持ち、1日約50トンの廃棄物を処理しています。環境省の調べでは、通常の産業廃棄物の再生利用率は5割程度ですが、ナカダイは99%と異例の数字をたたき出しています。
2007年、同社は廃棄物の工場としての限界を感じ、廃棄物からマテリアルを生産して新たな潮流を模索する製造業の工場に方向転換をしました。「人が不要としたモノを、最適な形で世の中の必要とする人へ“つなぐ”事業」として新たな方向に動き出したのです。
建築家やデザイナーと連携して廃棄された素材を活かした製品を製造し、2013年には産廃事業者としては異例のグッドデザイン賞を受賞しています。
現在では、廃棄物から製造したマテリアルを陳列販売する「モノ:ファクトリー」や、廃棄物の解体を体験できるワークショップやイベントを企画し、リマーケティングビジネスの幅を広げる活動も積極的に行っています。
職人の技術で無水鍋を製造。女性を魅了する「新潟精密鋳造」
1973年の会社設立から鋳造メーカーとして受注生産を行ってきた新潟精密鋳造株式会社は、新たな事業の柱を模索する中で、ステンレス鋳物ホウロウ鍋を開発しました。これは、和風から洋風まで幅広いメニューに対応できる無水調理鍋で、個性的な形状とカラフルなデザインに加え、手入れのしやすさが特徴となっています。サイズ展開も豊富で、愛用者を着実に増やしてきました。高級鋳物を製造してきた長年の経験を活かし、ホウロウと相性の良い特別配合のステンレス材容器も独自に開発、特許出願に至っています。
販促費を抑えながら知名度を上げる手段として、各種イベントに積極参加。また、ワークショップに鍋を貸し出すなど、地道な活動を続けることで口コミによる広がりをすすめてきました。単に鍋をPRするだけでなく、鍋を使った料理レシピも一緒に紹介することで消費者の興味を惹きつけてきたのも特徴のひとつです。
実際に家庭で調理する機会の多い女性に寄り添った商品開発を行うため、女性スタッフを中心としたチームを結成し、情報発信しているのも高評価につながった要因です。
徹底したこだわりで無煙薪ストーブを開発した「モキ製作所」
静かなブームを起こしている薪ストーブに新たな注目商品が投入され、世界が注目しています。開発したのは長野県千曲市にあるモキ製作所。「燃焼哲学」と名付けられた薪ストーブは、煙が出ないのが最大の特徴です。
木材を燃やせば煙が出るのは当然のことですが、これは温度が不十分なことによる不完全燃焼が原因と考えられます。そこで、同社は高温で燃焼させるしくみと、それに耐えうるストーブを開発しました。ポイントとなるのは、「茂木プレート」と呼ばれる穴の開いた金属製の板。ストーブ内に設置することで空気を対流させながら、高温を維持することを可能にしています。
開発には燃焼試験を繰り返し行い、通常400度程度の燃焼温度を800度にまで上昇させることに成功。日本のほか、アメリカやドイツでも特許を取得しています。
薪ストーブを扱うメーカーは北欧に多く、100年以上の歴史を持つところもありますが、多くは鋳物製のため壊れやすく、広葉樹のみしか使用できないという特性があります。モキ製作所の薪ストーブは鋼板製のため耐用年数が20年以上と長く、針葉樹や廃材でも使用可能。この特性を武器に、世界市場への進出を念頭に販路を開拓しています。
独自の視点・技術で市場を生みだす町工場に注目
町工場は、小規模・少人数だからこそ独自の視点や技術を活かし、大手メーカーにはできない発想の商品を生み出すことができます。これまで培ってきた技術を武器に、新たな分野に挑戦し、これまでなかった新たな価値を生み出す活躍に、これからも目が離せません。
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