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  • 2017.08.23

伝統工芸「刃物」が海外進出で再生!価格競争に打ち勝つ仕掛けとは

伝統工芸「刃物」が海外進出で再生!価格競争に打ち勝つ仕掛けとは

兵庫県の播州は伝統的に刃物産業が栄えていた地域です。
しかし、時代が変化する中で大量生産品との差別化がはかれず、後継者もいないまま衰退の一途をたどっていました。

ところが、わずか数年で「播州刃物」は海外からも脚光を浴びるブランドに様変わりしました。新しい商品を作るのではなく、方向性を変えることで起死回生をはかった手法を紹介します。

衰退の道しかないと思われた伝統工芸「刃物」に希望が生まれる

兵庫県南西部にある小野市・三木市は播州地域と呼ばれ、奈良時代から鎌類を製造してきました。
250年前には刀鍛冶が集まり、現在までさまざまな刃物製造の伝統技術を継承しています。その種類は豊富で、洋裁や美容・植物栽培に使われるハサミや鎌、包丁などがあります。

伝統的な製法を守り、職人が手間暇かけて丁寧に作ってきましたが、その良さを伝える術を持っていませんでした。その結果、工業製品との価格競争に巻き込まれ、苦境に立たされていました。単価が下がれば、後継者として手を挙げる人もいなくなります。播州の刃物は、技術の伝承が止まる寸前の状態にあったといいます。

地元組合は、最後の生き残りをかけ、刃物産業の再生を合同会社シーラカンス食堂の小林新也氏に依頼します。当初の内容は、「新しいハサミをデザインしてほしい」というものでしたが、現状を分析した結果、まったく違う方法で「播州刃物」を蘇生することになりました。

変えること、変えないことの見極めが成功のポイントに

小林氏が中心となって行った播州刃物再生の取り組みは、次のようなものでした。

●商品は変えないという決断
播州刃物の意匠には、長い歴史のなかで創意工夫されてきた機能性と美しさがあります。小林氏は商品を新しいデザインに変えることは得策ではないと考え、商品は変えずに売れる方法を模索するという決断をされます。播州刃物が持っている本来の魅力が伝わっていないことが本質的な課題ととらえ、工業生産品との差別化に乗り出します。

●ブランド化により高単価に成功
価格競争に巻き込まれていた播州刃物は、職人の手作業による高品質な商品であることを伝えきれず、低単価での販売となっていました。そこでまずは商品の質の高さ、メッセージ性を伝えるため、粗雑な印象の箱パッケージから桐箱へと変更、パンフレットやホームページのデザインも高品質な商品であることが一目でわかるように一新しています。

それまでの数倍の価格設定でも売れるようブランド化を促進し、利益構造を変えることに成功しました。後継者を育てられる環境も整えられ、継続的な成長を見込める好循環へとつながっていきます。

●展示会の成功体験で思いがひとつに
商品の良さを知ってもらう戦略として、展示会への出展も行いました。実際に聞くお客様の声や評価は、ものづくりへの自信につながり、地域の思いをひとつにする成功体験になったといいます。

海外の展示会への出展で未来を拓く

小林氏は当初から、新たな販路開拓として海外進出が必須と考えていたそうです。
はじめは難色を示していた組合も、初めて参加した国内の展示会での成功体験によって海外へも目を向け始めます。
パリで行われた展示会への出展を皮切りに、ドイツ、アメリカなどの展示会にも参加し、国内外の認知度アップにつなげました。

しかし、海外には刃物を研ぐという文化がなく、播州刃物が持っている切れ味を持続できないという新たな課題が生まれます。
そこで、展示会でワークショップを開催し、日本の刃物文化をまるごと輸出するという取り組みも行っています。

こうした策をとれるのも、お客様の声を直に聞ける場を設けていることがポイントになっているといえるでしょう。

伝統産業の可能性を広げた海外販路の開拓

播州刃物は、再生に着手してからわずか2年ほどで売上拡大を実現しています。
海外の販路開拓や適正な価格設定による利益構造の変革を通じ、後継者を確保できるまでにいたりました。価格競争から脱却したい、海外を視野にいれた展開をしたいと考える企業にとっても、学べることが多い成功例です。

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